
撤退した後、しばらくの間、家に帰るのが怖かった。
玄関の前で、少しだけ立ち止まることがあった。ドアを開けた先に、家族がいる。その顔を見ることが、できなかった。
電話が鳴るたびに、画面を見た。仲間からの着信は、出るのに時間がかかった。
失敗したことは、自分で受け止められる。それは自分の話だから。でも、信じてついてきてくれた人たちへの申し訳なさは、別の重さがあった。自分のことより、誰かへの申し訳なさの方が、ずっと重かった。
「迷惑をかけた」という言葉では足りない感覚だった。
顔向けできない、という言葉が一番近かった。
今、しんどい場所にいる人に聞きたい。
あなたが今感じている重さは、自分への失望だろうか。それとも、誰かへの申し訳なさだろうか。
もし誰かへの申し訳なさを感じているなら、それはあなたが誰かを大切にしている証拠だ。冷たい人間には、あの重さは来ない。
あの時の自分に、誰かそう言ってほしかった。